

今や技術的に失われてしまい聞くことができなくなった。。。。?
「縦振動のタッチ」
私のオリジナルのテクニックでもない為、ここで私がこのテーマについて書くこと自体が正解なのか、私が書いたことが正解かもわかりません。もう答え合わせができませんから。
ただ動画として誰も出していないですし、情報があまりに少なすぎて「縦振動のタッチ」サウンドを知らない方が多く、オカルトだといわれる方もいる。言葉のみが先行し弦の振動方向だけの話だと思っている方も多いのが現状です。
テクニック的には確かに存在し、私は実際に体験し仙台からレッスンに通い、上京してからも店舗に何度も足を運びました。
「縦振動のタッチ」は、構成している技術がかなり複雑に絡み合っています。
見て聞いただけでは出来ないほど難易度が高く、年単位の練習が必要であることはあることは間違いないでしょう。
ただ縦振動を自分なりに練習、研鑽を積んでいくことによって「その人の独自のサウンド」を右手によって作れるようになるであろう本当にいい教材だと考えています。
現在参考になるであろう本家の動画は、近年の録音技術に比べるとどうしても周波数的、ダイナミクス共に録音環状態が悪い。実際に動画を聞いてみると音質がかなり歪っぽくなっており、店舗で実際に聞いた音とはかけ離れています。
そこで誰かがやってくれるのを待つのではなく、ここは恥を忍んで私が録音したものを上げつつ私なりに解説してみたいと思います。
私以外のプレイヤーの方も実際にレッスンを受けた方であればできる方が多いかと思いますので、ぜひ動画にしていただきこの技術を後進に伝えていけるように&エレキベースの奏法のスラップ、指弾き、ピック弾きのように「縦振動のタッチ」も奏法の一つとして残せるようご協力していただけますと本当に有難いです。
縦振動のタッチってなんだ?
縦振動とはジラウドが提唱していた弾き方&考え方です。
弦を楽器に対して垂直に振動させてあげることで、基音からベースの音を出し、不明瞭になりがちなベースを弾き方によってしっかりとリズムをだし、ベースから出力できるサウンドの種類を劇的に増やせる奏法とも言えます。
ジラウドに通われた方は見て聴いたであろう「縦振動の実演」は
ズドンズドン!ブン!ブン!!
なん。。だ。。。しょ。。。。りゃ。。。。。
( ゚ Д゚) !!!!!
と、心底憧れてその他すべてを捨ててまで追い求めるか、そんなの音楽と関係ないとぶった切るか両極端に分かれてしまうほどの圧倒的な演奏でした。
わたくしは完全に「縦振動タッチの虜」になってしまい、音楽よりも楽器の鳴らし方を優先的に研究する日々を何年も過ごしたのです。
「こんな感じか・・・?いや、こんな感じか・・・音が太くなってきたきがする。。。できたんじゃないか。。。!!!!????」
と、自分なりに研究して自信満々で店舗に行き、「本物の縦振動サウンドでボコボコ」にされるのはもはや恒例行事となっておりました。
縦振動のタッチのレッスンには使い古されたハーフワウンド弦が張られたOPBが使用されておりました。
シングルコイルピックアップの特性と、使い古された弦がはってあることにより余分な倍音があまり出力されず「縦振動のタッチ」のレッスンにぴったりでだったからです。
まぁーなかなか反応してくれないこのOPBを弾くのが嫌になった方も多いではずです(笑)
そのOPBによる「縦振動の実演」で、ものすごい音を出されており弦を「指のヘッドスピードを上げ、弦をボディに対して縦に振動させることで芯のあるベースサウンドになる」と解説されておりました。
弦を縦に振動させてあげるとこんなにも変わるのか!と感動し、いざ実際にOPBを弾いてみるとその難しさたるや。。。弾き方が全く分かりません。。。。
「ひょろぉ~ん」
「こぉぉおおお~んん」
と、情けない音しか出ないのです。
思いっきり強く弾こうが叩きつけようが、今さっき聞いた「あの音」は全く出ません。。
自分でOPBを弾くたびに店内に放たれる情けない3弦Dの音。。
思い出話はここまで、ここから先は私なりに解説していきたいと思います。
縦振動のタッチを習得する。。。?
「よし!今日から縦振動のタッチを目指そう!!弦を下に押せばいいんだ!!!」
と。。。
正直これは私も通った半分正解半分間違いな考えであります。。。。
「縦振動のタッチ」においては「弦を縦に振動させてあげる」ことのみに集中してしまうと
ありがちなミスリードが起こってしまいます。
単純に弦の振動方向の違いだけに注目してしまうと
「縦振動のタッチのサウンド」
にはならないと断言できます。
簡単に実験してみましょう。
弦を指で持ち上げてフレットにぶつからない程度で色々な角度でリリースしてみたり、角度を変えながら強弱を変え弾くポジジョンを変えながらご自身のベースを弾いてみてください。
そこまで音は変わらないでしょう。
弦の振動方向だけに気を取られていては「縦振動のタッチ」のサウンドにはなりません。
このページでは「縦振動のタッチ」についてのお話のみで構成しますが、振動方向もかなり重要な考えですのでそれは改めて書きます。
改めて動画の解説文を見てみましょう。
ご本人の解説を分解してみる
ご本人の演奏動画の解説を改めて文字起こししたものです。
OPBによる縦振動のタッチへの誘い
普通の弾き方では弦がボディに対して横振動しています。
ところがピックアップは弦の横振動を拾うことがほとんどできないのです。
つまり横弾きすると実際に出てくる音は弦が回転運動に変化してから基音が出てくるのです。
細かいスタッカートする場合、実際には基音が立ち上がりません。
しっかり弦をつかみきってから垂直に押し込み
指先のヘッドスピードを上げれば弦は真上に上がってきます。
弦に縦振動を与えるタッチで弾けばピックアップは最初から基音をキャッチできます。
まず指で弦をピックアップ方向へ垂直に押し込み
素早く指を真下に振り抜けばアタック感ある基音が出てきます。
弾く場所を移動しても基音の変化はないのでしっかりとしたボトムを出すことができます。
もう一度横振動で弾いてみましょう。
音が軽くなりアタック感も弱くなります。
レガートで弾く場合は横振動のタッチが適します。
ピアニッシモでもアタック感が欲しい場合は縦振動のタッチが有効です。
ヘッドスピードは落とさずに弱く弾きます。
フォルテッシモで弾くとアヤポンドするときにE弦の打音が発生して基音より低いキックのような音が出ます。
この解説には非常に重要なポイントが沢山含まれています。
少しずつ分解していきましょう。
1.弦をリリースしてからの弦の動きを時間軸でとらえる
正確には弦振動というよりは弦を弾いてから音がどう変化していくのかを耳で判断するいうことだと思います。
弦振動については科学的に弦の振動を分析し、振動の仕方や發弦してからの減衰の仕方など、様々な研究結果をインターネット上で見つけることができます。
でもエレキベースは人間が弾く弦楽器です。科学的に分析されたからと言って音のイメージを止めてはいけないと思います。ピアノを一音鳴らしたときにクレッシェンドできる方と仰っている方もいらっしゃいます。
奏者のイメージによりサウンドは如何様にも変化が可能だと私は考えています。
そのうえで弦振動とサウンドのイメージをつかむためには時間軸で考えることが非常に重要だと考えます。
サウンドキャラクターに大きな影響を与えるのがアタックの部分です。
アタックのサウンドについて分解能を高めることがサウンド作りの大きなポイントとなりますから、
「縦振動にタッチ」のサウンドを目指すうえで非常に重要な耳の分解能
を鍛えることができると思います。
縦振動のタッチは「ブンっ」と鳴らしたときにどの周波数がアタックの頭にきているのか、ここを判別しないといけません。
自分でどんなサウンドを出しているのか判別できないとタッチの習得はなかなか厳しいものがあります。
2.指の動作の途中に弦に当たるのではなく、弦をキャッチしてから弾くという動作が始まる。
これも非常に重要なポイントです。
よくある指弾きとスラップの音が変わらない、カチカチいってしまってブン!とした音が出せないのもほとんどの場合がこれに当たると思います。
弦をつかんでコントロールできない為、弦が必要以上に暴れてしまい、先にフレットに当たって金属音が目立ってしまうのです。
そのサウンドのみ扱いたい方は問題ないと思いますがコントロールしたいと考えた場合は弦を掴んでからリリースしたほうがいいかと思います。
「真下に押し込み、真上にリリースする」
これは鏡を使ったトレーニングをお勧めします。
弦の振動方向を視覚で確認できるからです。人間は聴覚よりも視覚を優先しますから目視で振動方向を確認するのは非常に有効で、「弾いた感覚」という曖昧なものに頼らなくて済むからです。
3.ピアニッシモにおいてもベースのサウンドをコントロールする。
これは本当に重要なことだと思います。
氏のローディーに何度もつかせていただき共演しているミュージシャンの方々と度々お話させていただくことがありました。その中でとても心象的だったのはとあるドラマーの方との会話でした。
「強弱と付けるときはどこの席まで届けるのかイメージするといいよ。そこにおいて不自然にサウンドのキャラクタは変えてはいけないんだ。サウンドのキャラクターと音量は別の話だから。」
と。
楽器は違えど本当に心に刺さるお言葉でした。
縦振動のタッチは右手で扱えるサウンドを劇的に増やしてくれるタッチですから、ここにも重要なヒントが隠させていると思います。
弦振動だけに絞って分解してみる
ここでは単純に弦の振動方向にだけ注目してサウンドの違いを目と耳で比べてみて下さい。
まずは違いが分かりやすいように
・ジャズべのリアピックアップのみ
・リアピックアップの上でE弦を弾く
という条件でFFTピークホールドをスクショしたものです。

横方向

縦方向
100Hz以下が横振動方向(上の画像)に比べて縦振動方向の方が10dB近く多く出力させているのが分かるかと思います。
これは単純にマグネットピックアップの特性でありこうなって当たり前とも言えます。
リアピックアップの特性上、高倍音を拾いやすいので太いサウンドで弾こうと思ったら縦気味に弾いた方がいいでしょう。
じゃ実際のサウンドはどれぐらい変化するのか?
以下の動画は振動方向のみについてFFTと共に弾いてみた動画です。
どうやっても
ズドン!ズドン!!ブン!ブン!!!
にはならなそうですね。
実際、弦の振動方向による音の変化については
「音の立ち上がりの変化」
「ピックアップが拾う倍音の変化」
「フレットノイズの出方」
程度にしかアプローチできないと思います。
ピックアップの種類や特性によって振動方向について鈍感にチューンされているものもありますので、ご自身で実験される際は注意が必要です。
じゃ「縦振動のタッチ」のサウンドって。。?
「長ーい文章書いたのはいいけどお前できんのか?」
と言われそうなので、恥を忍んで最後に動画を載せておきます。
もっと表現豊かに縦振動のタッチを取り入れている方も実際にいらっしゃいますので、わたくしの演奏でよければきいてみてください。
動画では横振動~縦振動のタッチp~fと変化させています。
ジラウドベースで弾いていますがフツーのジャズべでもできます。
JIRAUD Black Cloud4 Neo Passive
フロントP.U.のみ
トーン半絞りくらい
HUBAmp→I/Oのセッティングで弾いています。
ウルトラローを扱っていますので必ずスピーカーやヘッドホンで聞いてください。
どうでしょう?
「縦振動のタッチ」はウルトラローからしっかりと発音し、よりベースらしいサウンドを扱えるようになります。
ピアニッシモからベースらしいブンっ!としたサウンドを出すことができます。
取り組むメリットとしては
・エレキベースの弾き方を多角的に考えられるようになる。
・一本のベースで扱えるサウンドが劇的に増える。
・習得までの流れで耳の分解能が劇的に上がる。
などなど私程度のタッチ技術でも得られるものは沢山ありました。
弦の振動方向をコントロールできるようになったとて、「縦振動のタッチ」のズドン!サウンドを出すためには何かが足りない。
「実はもう一つの決定的な要素」
があり、実はそこがキーポイントになります。
そこが分かるとグッと「縦振動のタッチ」のサウンドに近づきます。
それが見つかってくると本当に色んな角度からベースという楽器を考え触れるようになり、同じベース同じセッティングから出ているとは思えない全くの別サウンドを右手のみコントロールできるようになります。
ただし「縦振動のタッチ」は、ペダルのように買ったから、知識を得たからサウンドが増える訳ではありません。
もっとアナログで泥臭いものともいえるかと、練習というよりは修行に近いかもしれません。
偉そうに書いてしまいしたが私は私なりに「縦振動のタッチ」に向き合うことで、非常に大切なプロセスを踏むことができたと感じています。
エレキベースも「弦楽器」です。一本の弦を弾く弦以外にも音を出す、混ぜる、アプローチする方法はたくさんあります。
「もう一つの決定的な要素」については、ネット上で公開するか分かりませんが実際に来ていただければお伝えすることはできます。
知識だけ手に入れても何の役にも立ちませんから、今のところリアル限定です。
今回はここまで。最後まで読んでいただきありがとうございました。
またこの記事を書くにあたってポングさんにもご協力いただきました。
「縦振動のタッチ」について私よりも長い間ご研究されております。
その研究結果やご自身の経験からくる考えを元にした
「タッチを鍛える、音の成長を楽しむ3時間レッスン」
をやっておりますので、ご興味がある方はアクセスしてみてください。